まケツジケツジず船載ボートに小錨を積み、ボートを下ろして二、三00メートルほどこぎ出させる。
そこで小錨を投ケツジ下し、本船に戻る。
戻ったら乗員総出でロープを引っ張り、文字どおり本船を小錨までたぐり寄せる。
これを繰り返して、なんとか安全な水域に逃げ込む。
これがケッジングだ。
毎日やらされたら身体がもたないが、ときどき(年に何回か)ならいい刺激になる。
不可能を可能にするには、あなたにも年に一度か二度のケッジングが必要だ。
それに、実を言えばケツジングは(肉体的にはきついが)けつこう楽しい。
高校生のころの合宿みたいなものと思ってもらえそれなりのグループで、非日常的な空間に身を置いて、共ばいい。
けっして一人でやるものではなく、通の目標に向かって頑張るのだ。
女性の場合なら、本格的なトレーニングと素敵なマッサージやエステ体験を組み合わせた豪華なスパでの一週間とか。
朝早くから午前中いっぱい、思いつきり肉体をいじめ、最高にヘルシな昼食をとってから、午後はスパ三昧。
インターネットで探せば、そんなプログラムが世界各地にあるはずだ。
あるいは(私の趣味で言わせてもらえば)夏ならサイクリング、冬ならスキーのアドベンチャーツア。
もちろん、どの場合にも信頼できるインストラクターがいるプログラムを選ぶこと。
運よくインストラクターが素敵な男なら、きっと楽しみも倍増することだろう。
あるいは何かひとつ、ものすごく高い用具(レス仕様の自転車とか、余裕があればヨットとか)を買って使いこなせるようにする。
高ければ高いほど、無駄にしたくないというモチべションが湧くだろ〉つ。
まったく異質な種目に挑戦してみるのもいい。
運動の幅が広がるのはスカッシュとかヨガとか、いいことだ。
とにかく、興味が持続するような工夫を(しかも楽しい工夫を)しよう。
しばらく前に、妻のヒラリーと私は二五人の親しい友人たちとケッジング合宿をした。
絶景の中を自転車でひた走るツアーだ。
インストラクターは、先に紹介したパトリシア。
六O歳近くになってから、持病を克服するためもあって本格的に自転車レスを始め、今やシニアのレスで常に上位に食い込んでいる素敵な女性だ。
参加者は五0ー六O代が中心で、たいていはカップルでの参加だ。
もう一O年来の自転車仲間もいる。
最初は近くで週末の数日を過ごすだけの「合宿」だったが、その後は世界各地に出かけている。
今回の場所はアイダホ州、パトリシアの地元だ。
彼女の知り尽くしたコスを、彼女の指導で走るのだから安心だ。
しかし、彼女の組んだプログラムはきっかった。
第一日は、昼食までに九0キロを走破。
らくごしゃありがたいことに、落伍者を収容する追走車も用意されていた。
それも三台だ。
ふつうの自転車ツアーなら各人が自分のペースで走ればいいが、そこはケッジング合宿。
インストラクターのかけ声に合わせ、ひたすらペダルを踏むしかない。
素敵だったのは夜の時間だ。
私はこの本のことで頭がいっぱいだったから、ご婦人方の健康談義にひたすら耳を傾けた。
女性は一O人ちょっといて、みんな大人の、楽しい人たちだった。
更年期のこと、職場で経験した性差別のこと、子どもが巣立った後のむなしさ、女だけでする旅行の楽しさ、五O代・みんなに共通していたのは前向きで楽天的に生きてい六O代のセックス話題はいろいろだったが、みんな、仕事と子育てを両立させていた現役時代よりも今のほうが楽しいと言っていた。
彼女たちによれば、女だけの旅行は最高らしい。
楽しいだけでなく、最高のケッジング合宿にもなりやすい。
若さ(と美しさ)を保つという目標を共有できるから、手抜きをせずに頑張れるのだろう。
気の合う仲間が集まり(正直言って、男の場合はこれが意外とむずかしいてきちんと計画を立てれば、たいていは記憶に残る体験になる。
私たち夫婦の友人で会社役員をしているティナが言っている。
「女だけの合宿は大好き。
女には、日常から離れることが何よりも必要なの。
妻であることも、母であることも、仕事人間であることも忘れて、ただ一個の人間として、ほかの女たちと向き合い、時間を気にせず話し合う機会がつくれる。
そんな日が何日かつづくと、不思議な力が働くのよね。
何でも打ち明けるようになるの、正直に。
自分を笑い、お互いを笑いあってね。
すごいことよ」。
アイダホ州のサモンリバで川下りに挑戦したときは、温泉が沸き出している場所に来ると全員が素っ裸になり、自然という。
そしてその後は再び救命胴衣を身につけて、全力でカヌーをこいだここまでできるんだ」という達成感を味わった。
ティナにとって、女だけのスパ体験を楽しんだそうだ。
もちろん、「女だけで、の旅行は「行く先がどこでも、期間がどれくらいでも、本当に心が癒される賛沢な日々」なのだ。
わが妻ヒラリーが愛するのはヨガ合宿だ。
メキシコあたりの、私には地の果てとしか思えない場所まで出かけて、ヨガ三昧の一週間を過ごす。
ヒラリーはいつも、日に焼けてすごく健康そうになって帰ってくる。
食事は野菜と豆が主体で、マルガリタが色を添え、ヨガマットの上で過ごした長い一日を意義あるものにしてくれるそうだ。
しかし、ヨガ合宿でもクライマックスは「おしゃべり」の時間らしい。
コミュニケーションと親密度の深さは、私が知る男女混成の旅をもちろんヒラリーから聞いた話だが、はるかに超えているらしい。
残念ながら、男はそこまで腹を割って話し合えない。
ひたすら酒を飲んで、酔っぱらって愚痴をこぼし、朝になったら忘れてしまうのがオチだ。
旅をして本音を語り合い、本当の友だちになるという能力にかけては、やはり女性に一日の長がある。
うらやましい限りだ。
生涯の友になった自転車もう遠い昔の話だが、五O歳の誕生日に息子や友人たちが素敵な贈り物をくれた。
有名な「ベン・セロッタ」のスチール製自転車だ。
レース仕様で、青と黄色に塗り分けであった。
もともと自転車には乗セロッタの自転車をもらってからはすっかり夢中になり、今ではサイクリングが私の日常っていたが、的なエクササイズの中心になっている。
あれから何台も乗り替えたが、セロッタには今もときどき乗っている。
老いの潮に流されかけていた私を元気モードに引き戻してくれたことに感謝しているからだ。
男だって、ショッピングの誘惑に勝てないことはある。
私はついに誘惑に負けて、ニューヨーク州サラトガ・スプリングスにあるセロッタの工場まで行ってべン・セロッタ本人に会ってしまった。
何を隠そう、彼自身が『若返る人』を読んでくれて、気が向いたら訪ねてきてくれという手紙をよこしたのだ。
私はパリの高級ブランドの本屈に出向くご婦人方の気分で彼の工場を訪ね、彼と一緒にサイクリングをし、自転車のことを何時間も話しあった。
そしてベンは、どのサイクリング雑誌でも「世界最高」と評価されているカスタムメイドの自転車を作ってくれた。
素晴らしい。
そして、今ではベン・セロッタ特製の自転車が我が家に二台ある。
私の自転車を見たとたん、ヒラリーも注文したからだ。
天国に向かってこぐDr.ハリーに言わせると、今どき本気でボートをこぐのは一部名門大学の同窓生だけで、そんなエリート臭い話はこの本に似合わないそうだ。
しかし、これだけは先生のアドバイスに従えない。
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